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【番組を視聴する会】市民が記録した戦争 ~手紙、日記、作文、絵画で平和を考える~ 上映会の見どころ

放送ライブラリーでは2月18日(日)まで、国内外の市民が体験した戦地や疎開先での暮らし、故郷・家族を想う気持ちなどを克明に記録した手紙、日記、作文、絵画などの史料を取り上げたテレビドキュメンタリーを特集上映しています(詳しくはこちら)。

今回は、上映番組の中から、担当Oよりオススメをご紹介します。

報道特集 ポーランドの小さな証言者たち(1986.12.07放送/TBSテレビ)

<番組概要>
第2次世界大戦でナチス・ドイツに踏みにじられ、600万人の命が奪われたといわれるポーランド。首都ワルシャワにある国立現代資料館には、戦争体験を描いた子どもたちの絵と作文が保存されている。番組では、父母の銃殺、収容所への強制連行の場面などの作品を紹介し、42年ぶりに判明した作者へのインタビューを通して戦争の記憶の風化を問う。素朴なタッチで描かれた作品と再会した、かつて子どもだった作者たちは「子や孫に同じ体験をさせたくない」と語る。

決壊 祖父が見た満州の夢(2018.02.11放送/信越放送)

<番組概要>
戦争中、長野県河野村の村長を務め、村人を満蒙開拓団として満州国へ送り出した胡桃澤盛(くるみざわもり)さんの苦悩を、孫の伸さん(51歳)が日記を通じて辿るドキュメンタリー。家族のため、村のため、社会のために生きたい、常に正しくありたいと願っていた祖父は、気がつけば国のため、戦争遂行のために邁進していた。国民の命をないがしろにした国の政策、個人を犠牲にしてまでも国全体の利益や一体感を優先させる思想、そこに与した祖父。祖父は罪の意識に苛まれ、42歳で自ら命を絶った。戦後、その過ちと向き合おうとしたときの苦しみの深さを思う。

体験者たちが綴った記録を見てみると、そこには記録映像や記録写真だけでは分からない「個人の生の眼差し」を感じます。

「報道特集 ポーランドの小さな証言者たち」に登場する絵画だけでなく、子どもの視点でかかれた絵日記や作文も、その眼差しがあまりにも純粋で、国や時代に関係なく、見ているこちらに戦争の悲惨さをより大きく訴えてきます。子どもに二度とこんな悲惨なことを描(書)かせてはいけない、と大人としての責任を強く考えさせられました。

「決壊 祖父が見た満州の夢」の胡桃澤さんの日記には、30代半ばで村長となり、村のために奔走する一人の青年の心情が綴られています。同世代の決断に「私だったら…」と自身を重ね、終わってもなおその罪を個人になすりつけてしまう戦争の非情さに打ちひしがれました。

ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突も長期化し、連日報道される不安定な世界情勢が日常となりつつあります。大きな争いの犠牲となるのは市民です。今回上映しているどの番組も、見るにあたって少し心の準備が必要となるかもしれませんが、そこで生きる市民ひとりひとりの生命、生活に思いをはせ、忙しい日々の中で一度立ち止まって、平和についてゆっくり考える機会となれば幸いです。

上映会場の様子

ご来場いただいた方々からは、「疎開した子どもたちの淡々とし筆致に胸を打たれた」(70代・横浜市)、「戦争体験を語る人が少なくなっていく中で、体験を記録することはますます重要になっていくと思う。」(60代・横浜市)、「フィクションではない、本当の記録は胸に訴えてくる。」(70代・横浜市)、「難しいところもあったけど、戦争について“恐ろしい”という感情は分かった」(10代・横浜市)、「戦争について考え、戦争はだめなんだと言える上映会を続けてほしい」(60代・藤沢市)といった感想をいただいております。

上映会終了後も放送ライブラリーの視聴ブースで番組をご視聴いただけますが、皆様のご来場ぜひお待ちしております。

<開催概要>
会 期:開催中~2月18日(日)、10:30~16:40 
    ※月曜休館、2月12日(月・振休)は開館、翌13日(火)は休館
会 場:放送ライブラリー(15席)
入 場:無料(入退場自由、事前申し込み不要)
主 催:(公財)放送番組センター