vol.1「ザ・ドキュメント “異才”たちの凸凹道 不登校17歳 東大へ行く」
はじめまして。
放送ライブラリーで主にテレビ・ラジオ番組の収集保存、公開(アーカイブ)業務を担当しているOです。
放送ライブラリーで公開している数多の番組から、スタッフがぜひお勧めしたい番組について、連載形式でお届けします。
今回ご紹介するのは、
「ザ・ドキュメント “異才”たちの凸凹道 不登校17歳 東大へ行く」
(2020.03.30放送/関西テレビ放送)です。
不登校など学校の枠からはみだした子どもたちが自分らしさを発揮できる学びの場を目指そうと、東京大学の中邑賢龍教授が立ち上げた「異才発掘プロジェクトROCKET」。ユニークな子どもたちが、世の中を動かす異才の候補生として選ばれています。この番組は、ROCKETの創設者である中邑教授と、そのメンバーである子どもたちの歩みをつづったドキュメンタリーです。
主人公は、「富士山展」の作品制作に挑戦する2人の17歳です。ROCKETに参加した当初は好きな絵を描いたり、物を作ったりと自分の世界に没頭していた彼らでしたが、成長するにつれ悩みも変わり、「自分が好きなもの」を突き詰める創作と「生活」としての創作の両立について考えるようになります。2人がプロジェクトを通じて学んだこと、表現者として生きていく決意も見どころです。
一方、ROCKETに参加したけれど、未来が見つけられないと活動を離れるメンバーもいます。紙模型を制作するROCKET1期生の男性は、今回初めて毎年行われる成果発表会を欠席しました。18歳になったけれど、まだ未来が見つけられずモヤモヤしている彼は、中邑教授に「ROCKETから離れたい」と告げました。中邑教授は、「面白くなくなったら連絡ちょうだい。ずっと面白いならそれでいい。いいよ、30年後でも。」と優しく声をかけました。
2人の別れを象徴する夕空が、印象的に映されています。
ギフテッドや浮きこぼれの類まれな才能を伝える番組は数多くありますが、この番組は自分の道に悩みもがく子どもたちのありのままの姿を伝えています。
番組では言及されていませんが、中邑教授は、21年からROCKETに代わり新たに「LEARN」を立ち上げています。好きなことを突き詰める以前に、意欲がない、まだ突き抜けていないもがいている子どもたちにこそ、支援が必要なのではないかという思いがあったようです。
誰でも失敗することや立ち止まることは怖いかもしれません。
しかし、どんな自分も認めながら、そんな自分と付き合っていくことも成長なのだと、番組に登場する子どもたちひとりひとりが教えてくれています。
過去を振り返って思うことですが、「その時しか悩めないこと」って皆さんはありませんか。その時の感性で、何を信じて、どんな選択をするのかー。
自分の生き方の舵を取ろうと、10代の彼らが大人の力を借りながら試行錯誤する姿は、瑞々しく、少し羨ましくも見えました。
この番組を制作した宮田輝美ディレクターによる、2021年放送「ザ・ドキュメント となりのミライジン」も、気になった方は是非チェックしてみてください!
今後も、隔月更新でスタッフおすすめ番組を紹介してまいりますので、チェックしていただけると嬉しいです。
担当O